


「坂本図書」をご存知だろうか。無類の本好きだった坂本龍一氏が保有していた本を未来に残すために始まったプロジェクト。古書店の店主になるのが夢だったという氏の蔵書を多くの人と共有するための図書館構想として生前から準備が進められ、2023年にオープン。場所は非公開。ウェブで予約をした人にのみ場所が知らされる仕組みです。この「坂本図書」の思想を引き継いでもう少し一般に開かれた形でスタートしたのが、「坂本ヤエカ」。場所は白金高輪。閑静な住宅街の一角、お庭のある瀟洒な邸宅をリノベーションしたヤエカのライフスタイルショップ「YAECA HOME STORE」の一階にこの図書スペースが誕生。こちらは事前予約しなくても利用できます。坂本図書と違うのは、あちらは氏が実際に読んで所有していた貴重な本なのに対し、坂本ヤエカは坂本図書の一万冊にも及ぶ蔵書の中から季節ごとにセレクトされた同じタイトルの本が並んでいて、本が気に入れば購入することもできるそうです。
併設の喫茶室では、ヤエカが手がける洋菓子店、SAVEUR(サブール)のお菓子がいただけます。私はシンプルなバタークリームケーキ「ガトー・ア・ラ・クレーム」とドリップコーヒーを。田園調布のサブールはテイクアウト専門なので、店内でゆっくり楽しめるのはいいですね。お菓子は買って帰ることも可能です。私が訪れた日はあいにくの雨でしたが、雨音と低い音量で静かに流れる音楽をBGMに選んだ本のページをめくるのは、その湿度感と雨音が絶妙にマッチしていて、心地よい時間でした。むしろ雨でよかったのかも。何時間でもいられそうだなと思いましたが、席数がそう多くはないので、ほどほどにしてお暇しました。
音楽や文学をはじめ、美術、哲学、民俗学、歴史、言語など多彩なジャンルの本が並びます。もちろん坂本氏自身の著書も。本のなかの言葉に触れ、彼の思考が手渡され、文化が継がれていく永い時間に想いを巡らせる。次は本家の「坂本図書」に予約を入れて、じっくり本の世界に没頭してみたい。

