


人形町駅で地下鉄を降りて地上へ上がり、人形町通りを歩いて行く。今日は「よし梅本店」でお昼ご飯を食べると決めているのに、右に左に昔ながらの老舗名店の看板をいくつも眺めながら歩くので、ついつい浮気しそうになってしまう。それくらい誘惑の多い「魔の通り」とも言うべきこの界隈。なんとか初志貫徹、目当てのお店の前に立つ。
風情のありすぎるエントランス。右手の小径から奥へ進み、引き戸を開ける。もうすでにちょっと口元が緩んでくるぐらい楽しみでしょうがない、笑。奥のカウンターに通されてメニューを吟味。小雨が降っていて少し肌寒い日だったので、雑炊御膳にするか、いつもの焼魚御膳にするか、しばし悩んで、やはり焼魚にする。
カウンターの向こうで年配の職人さん二人が黙々と料理する様子を眺めながら待っていると、御膳が運ばれてきた。いつも通り、一分の隙もない御膳。鰆の西京焼きの焼き加減と照り加減の完璧さ。鯵の南蛮焼きの上に盛られた薬味のスライスの繊細さとパリッと感。お昼の定食にここまで細部にこだわった精緻さを提供してくれるお店は老舗でも最近はなかなかないと思う。手作りの香の物に、しじみのお味噌汁というのもポイントが高い。
奥の小鉢は、季節によって毎回内容が違う。今日は丁寧に炊かれた筍と絹さやを添えた豚の角煮。小鉢といえど贅沢な盛り合わせ。筍の歯触りも申し分ない。意外だったのは角煮の上に白いみぞれ状のものがあり、大根おろしかと思ったら出汁でのばしたマッシュポテトだった。滑らかなポテトがほろほろに煮込んだ角煮とベストマッチ。手が込んでいて気が利いていて、思わずニンマリしてしまう。
「美味しい」と「嬉しい」を繰り返し反芻しつつ、しみじみ味わいながら完食。心から「ああ、美味しかった」と思える食後感。本当に満足度の高いランチです。
ごちそうさまでした。