名古屋市・伏見、御園座のほど近くに店を構える老舗和菓子店「むらさきや」。立地から歌舞伎役者や俳優さんのファンも多いため、その知名度は全国区です。看板商品は夏は水羊羹。秋は栗蒸し羊羹。ここは何と言っても、カステラ生地と二層になった独特のスタイルに驚きます。とは言っても、名古屋の人にとってはこの二層仕立ては栗蒸し羊羹のスタンダードのようで、むらさきやに限らず、美濃忠や川口屋など名だたる名店もだいたいこのスタイルです。味噌松風のようなもっちりとした蒸し生地だったり、黒糖カステラだったり、なかには軽羹生地を合わせるといった強者も。
栗の産地で有名な岐阜も近いですし、もともとういろうや、あんこ文化の土地柄でもありますから、名古屋の栗蒸し羊羹が不味いはずがありません、笑。まずは、栗蒸し羊羹部分を戴きます。もっちりとした蒸し羊羹はあっさりとした仕上がりで栗の美味しさが引き立ちます。三温糖と醤油を味のアクセントに効かせたカステラ部分はむっちりとした仕上がり。パサつく感じは全然ないので羊羹とも上手く馴染みます。最後に両方を合わせて食べると舌触りの良い高級な栗入り蒸しパンのよう。これもまた、一粒で二度三度美味しい的な、ひつまぶしにも通じるサービス精神のなせる技でしょうか。名古屋の食はいつもながら楽しいですね。