BACH京都分室「鈍考」にて
しばし読書に没頭する

京都・修学院離宮近くにオープンした「鈍考」。ブックディレクターの幅允考氏が代表を勤めるBACHの京都分室であり、氏の蔵書を公開した私設図書館でもある。なかには「喫茶 芳(ファン)」が併設され、ネルドリップで丁寧に淹れたコーヒーを飲みながら檜林の借景に囲まれた静謐な空間で読書に没頭できる贅沢な時間を過ごせます。

「鈍考」は、ウェブサイトから事前に予約を入れる完全予約制。予約者には前日に入り口のドアを開錠するパスコードが知らされる。このちょっとした特別感がいいですね。予約した時間に赴き日常から特別な時間へのドアを開けると、左側の壁一面に幅氏の蔵書3000冊がお出迎え。右手にはロッカーがあり、荷物を気にせず手ぶらで自由に本と向き合えるようになっています。正面には緑豊かな檜林。縁側に置かれたクッションのブルーが清々しく映えます。縁側にソファ1台とクッション。景色を堪能できるように林に向かって置かれた2脚の椅子は、オーレ・ヴァンシャーのコロニアルチェアではないですか。昨年、東京都美術館で催された「フィン・ユールとデンマークの椅子」展であれこれ名作椅子に座った結果、座り心地が最高で最も気に入ってしまった椅子がこのオーレ・ヴァンシャーのコロニアルチェアでした。まったく疲れないし、肘掛けの具合もいい。いいなあ。家にも欲しいなあ。これを読書用の椅子として置いていただけるなんて、素晴らしい。広い畳の小上がりもあり、奥には喫茶のカウンターも。縁側、椅子、小上がりとお好みの場所を選んで読書ができるのもいいですね。建物は、竹林寺納骨堂や、瀬戸内の宿泊もできる豪華旅客船「ガンツウ」でも知られた建築家の堀部安嗣による設計で「手刻み」と呼ばれる日本古来の伝統工法が随所に用いられています。

文学から自然科学、アート、工芸、建築、漫画と幅広いジャンルの蔵書の中から興味ひかれる本を見つけたら、あとは思い思いの時間の過ごし方で予約枠の90分はあっという間。店主のファンさんが淹れてくれるコーヒーは、大坊珈琲店モデルの手回し焙煎機で1キロずつ1時間をかけて焙煎された豆をネルドリップでじっくり抽出された深煎りコーヒーで、大坊ファンならちょっとニンマリしてしまうような味わいです。読みたい本を読破しに通っても、旅の途中でスローダウンするもよし、建築と景観とコーヒーを堪能しに行くもよし、です。

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