猛暑の中、どこかで冷たいものでも飲みながら空調の効いたところでゆっくり休憩したいと思ったら、青山1丁目駅からほど近い草月会館2階にあるconnel coffeeが私の第一選択肢。青山通り沿いにあり、赤坂御所や高橋是清翁記念公園の贅沢な緑の借景が美しい気持ちのよいカフェです。店舗デザインはもとより運営母体も佐藤オオキ氏率いるデザインオフィスnendoが担っているこのカフェは、日曜祝日はお休みだけど、そのぶん落ち着いていて、周辺に勤務する人の憩いの場となっています。コーヒーなどのドリンクやスイーツ、パンなどの軽食はもちろんモーニングやランチボックスもあり、テイクアウトも可能ですが、やはりここは抜群の居心地なのでイートインしない手はありません。
そして、この場所の本当の「ご馳走」はなんといってもその空間です。1977年に丹下健三の設計によって竣工したこの建物は、近年nendoによってリニューアルされました。カフェ自体のスペースはそれほど広くないのですが、階段を上がった広い「談話室」と呼ばれるフロアの空間は通りに面した大きなガラス壁面に向かいの赤坂御所の緑が溶け込み、室内なのにまるでテラス席にいるような錯覚に陥りそうです。カウンターの天板には黒の人工大理石を用い、天井に使用されたグレーペンミラー(ガラスそのものが黒っぽい濃いグレーをしている)と呼応する形で緑が映り込み、空間全体が緑に包み込まれるような効果を生んでいます。
インテリアは竣工当時から使われている、エーロ・サーリネンのチューリップチェアとテーブルを元々の白から漆黒に再塗装。窓から降り注ぐ緑とミラーによるレフレクション効果を落ち着いた床材とインテリアの黒でぐっと引き締めているのはさすが。明る過ぎないシックで大人な空間を実現しています。さらに反対側の眼下にはイサム・ノグチが手がけた「天国」と名付けられた草月ホール1階の石庭が広がります。真夏の炎天下、緑が映える極上の空間で快適にお茶ができるなんて、まるで天国。ものすごーく豊かな時間を過ごすことのできる満足度の高いカフェです。