さて、こちらも同じく名古屋は川口屋の生菓子。錦の繁華街にそこだけエアポケットのように現われる日本家屋に藍のれん。創業は元禄年間と300年以上の歴史をもつ老舗中の老舗です。むらさきやは名古屋以外では買うことが難しいのですが、こちらは新宿高島屋でも購入が可能です。最近は手間のかかる漉し餡などの餡炊きを製餡所に委ねるところも多いと聞きますが、川口屋ではそれぞれの菓子に合った数種類の餡を丁寧につくり分けていて、商品名と一緒に餡子の種類が詳しく明記され、こだわりのほどが窺えます。どの生菓子も繊細な作りと上質な味わいに唸ること請け合いの逸品ばかり。
今回、購入したのは3種。小萩もちは淡いエメラルドグリーンに染めた道明寺に漉し餡を包んでいますが、実は漉し餡の周りをうっすらと白餡で包んだ二重餡です。道明寺は上に萩の花に似せた紫色のイラ粉を散らした繊細な仕上げで見ているだけでうっとりします。待宵草は、黄色の焼皮に備中餡を包んだもの。焼皮は長命寺の桜餅などで知られる小麦粉に寒梅粉を加えて焼いたものですが、川口屋の焼皮は求肥と見間違うほど艶があり、しっとりもっちり焼き上がっていて、パサつきは一切感じられません。備中餡とは、白小豆の中でも特に最高品質と言われている岡山県備中産の白小豆を使った漉し餡です。これが300円台で買えるとは申し訳ない気持ちになります。
栗粉は、栗と砂糖のみを練って茶巾で絞り栗の実をかたどったもので、白餡を混ぜていないので、ダイレクトに栗の味が楽しめるまさに秋の風物詩。栗きんとんの方は前日までの要予約なのですが、栗粉は予約なしでも買えます。今回はまだ栗蒸し羊羹は店頭に並んでいなかったのですが、来月にはラインナップされるかと思います。川口屋の栗蒸し羊羹も松風との二層仕立てのタイプですが、こちらも今からものすごーく楽しみです。