神戸元町の海岸通にある1938年竣工のヴィンテージビル「チャータードビル」。こちらに2023年にオープンしたVAGUE KOBE。2021年にフランスのアルルに開設されたスタジオ兼ギャラリーVAGUE ARLESに続く2拠点目で、プロダクトデザインや空間デザインを手がける柳原照弘氏の「TERUHIRO YANAGIHARA STUDIO」が主宰するスペースです。中にはギャラリーやスタジオ、カフェなどがあり、天井の高い雰囲気のあるスペースをふんだんに生かした展示が定期的に行なわれています。
表参道のジャイル・ギャラリーで行なわれた「麻世妙−majotae」の展示が記憶に残る、美術家で近世麻布研究所所長の吉田真一郎の展覧会が、11月11日まで開催中。気の遠くなるような幾つもの工程を経て精製されたとろみのある白い大麻布、麻世妙とは対極にあるかのような、漂白されず自然のままの姿の「未晒−mizarashi」が今回の展示テーマ。時を超えて紡がれる茶色やベージュの自然布がVAGUE KOBEの内装の土壁と調和した圧巻の空間。同時開催の陶芸家、石井直人の展覧会「Kongen」も空間とも吉田氏の展示とも呼応するような世界観で、併せて一つの展示を観たかのような充足感に満たされます。
旧居留地と呼ばれるこの辺りには、このチャータードビルをはじめ、古いヴィンテージビルがたくさん残っています。震災を乗り越えた建物が紡ぐ歴史を感じさせる街並みを壊さないよう、新しく建てられたビルも調和をとりながら建設が進められていて、近年あちこちで進む再開発で高層ビルが立ち並び、どこも似たような街になっていくのとは一線を画す開発で、港町ならではの独特の雰囲気が維持されています。石造りの建物にエルメスなどの歴史あるハイブランドのテナントが入っている様はまさに「しっくりくる」という感じ。どうかこの先も「神戸元町」の街並みが残っていきますように。
VAGUE KOBEのカフェも落ち着いた雰囲気で素敵です。フードもオーガニックな感じで良さげでした。