京都で鯖寿司を食べるなら、贔屓の店はどこですか? 知名度ナンバーワンはやはり「いづう」なのでしょうけど、最近は鯖寿司もどんどん値が上がり、なかなか贅沢品になってきました。「いづう」からの暖簾分けのお店は京都市内にもいくつかありますが、そのなかでも本家にほど近い八坂神社石段下に店舗を構える「いづ重」を私はよく利用します。鯖寿司とひとくちに言っても、鯖の〆め方、酢飯の塩梅、ご飯の量や詰まり具合、昆布とのバランスなど、お店によって微妙に違いがあり、好みのお店を探す楽しみがそのへんにあります。そして鯖寿司以外のラインナップに魅力的なものがどれくらいあるか、もお店選びに大いに影響します。「いづ重」も鯖寿司はもちろん、鱧寿司や箱寿司、笹巻寿司など目移りするメニューが目白押し。気軽に食べられる巻き寿司やいなり寿司のファンも多く、普段使いから特別なごちそうまで気分によって使い分けができる万能なお店です。
鯖寿司といなりの盛り合わせが食べたかったけれど、夏場はいなりがお休み。ならばと鯖寿司と鯵寿司の盛り合わせにします。それと上箱寿司をお願いし、2人でシェアして戴きました。鯖寿司の貫禄に負けないほど、鯵寿司も風味豊か。箱寿司の小鯛、海老、穴子、玉子の4種の具材に施された仕事も本当によく考えられた組み合わせだなと毎回感心します。店の雰囲気も相まって「京都に来たな」という満足感がこれほど得られる食事もそうはないかなと。
余談ですが、私はこのお店のインスタグラムの密かなファンです。更新してらっしゃるのは女将さんでしょうか。店舗営業のインフォメーションの中にちらりと垣間見せる大将への愛あるツッコミがとてもチャーミングで、ついつい用がなくても覗いてしまいます。そして、もうひとつの隠れインスタグラムが「祇園石段下いづ重の話」というアカウントでお寿司以外のお話が、番頭さんと名乗る方によって綴られています。noteへの導線もあり、老舗ならではの歴史を感じさせる解説が京都らしいユーモアを交えて軽妙な小話仕立てで語られていて何とも粋な読み物として楽しめるんです。書いてるうちにまた、いづ重のお寿司が食べたくなってきました。今度はいなり寿司を絶対食べよう。プチプチした麻の実の食感が楽しい定番いなりも良いけれど、焼いた九条葱が入った「大人のいなり」も捨てがたい。