ジャン・プルーヴェが遺したもの

東京都現代美術館へ、ジャン・プルーヴェ展を観に行ってきました。
プルーヴェといえば、1934年に誕生した名作、スタンダードチェアがいまも世界中のコレクターから注目を集めていますが、展示作品のなかで私が興味を惹かれたのは、組み立て式住宅。戦争被災者のため1日半で組み上げられる画期的な工法で、組み立て、解体を経てリユースが可能となるプレファブ住宅です。1940年代の作品ではあるけれど、現代の課題や思想に通じる気がして、なるほど優れたものはやはり時代を越えて十分に通用する強度を持ち続けるのだなと改めて思う。

世界中で「サスティナブル」が謳われる現代において、日本でもたとえば、Sanuという会社が始めた別荘のサブスクがある。月ごとに5万5,000円の会費を払えば入会金も宿泊料もかからず各地の別荘が年間30泊以上利用が可能になるサービスで、初期費用や維持管理に二の足を踏んでいた若い層に人気を得て、現在、会員募集はウェイティングが出るほどの人気らしい。似たようなサブスクは他にもあるけれど、私が「いいな」と思ったのは、別荘建物の仕様だ。デザインに優れているのはもちろん「SANU CABIN」と呼ばれるこの建物は、柱などの構造材から仕上げ材まで全てのパーツがユニット化され、施設を移動/撤去する場合に備え、建築資材を再利用できるよう、資材を壊さずに解体できる設計となっている。

生前のヴァージル・アブローが、VITRAとの共同で「2035年の暮らしのあり方」の定義づけを試みた展覧会「TWENTYTHIRTYFIVE」で、インタビューにこう答えている。「おそらく将来、家具は必要なくなるだろう。過去のものをそのまま再利用し、新しい環境に置くという考えが、新しい家具のあり方なのかもしれない」。

鍛冶工からキャリアをスタートさせたプルーヴェは、1929年から家具の制作を始めた。その原則は「組み立てられ、解体できること。折り畳まれ包んで収納できること。ここかしこに必要に応じて持ち運びできること」だったという。

過去は未来へとつながっている。

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