京都・五条、住宅街の中に静かに佇む河井寛次郎記念館。かつて寛次郎の住まい兼陶房だった建物です。自ら設計し、暮らした当時のままの建物の奥には大きな登り窯も遺され、思いのほか広い敷地であることに驚きます。河井寛次郎は、民藝運動に深く関わった陶芸家として知られていますが、陶芸の他にも彫刻、デザイン、詩、随筆などの分野でも多くの作品を残しています。
その言葉には、ことごとく、はっとさせられます。寛次郎の言葉には常に「自他合一」の精神とも言うべき思想があふれていて、ものづくりにおいて自分と向き合うことで見えてくる世界があったのだろうと感じさせられます。
「すきなものの中には必ず私はゐる」
「私はあなた 私以外に見えない あなた」
「物買って来る 自分買って来る」
建物の中にいても陽光が差すような温かみがあり、展示された作品や寛次郎の言葉に触れるうちに新しい視点を得た気がして、記念館を出ていく頃には清々しい気持ちにさえなっています。畳の上で自由気ままにくつろぐ猫の様子にほっこりし、また来ようと思いながら建物を後にする、京都のなかでも大好きな場所の一つ。展示替えも年に数回行なわれるので、折にふれ何度でも足を運びたい。そんな記念館です。