究極のミニマリズム。四ツ椀と暮らす

鎌倉時代、鴨長明が一丈(約3メートル)四方の小さな草庵で隠遁生活を送りながら、この世の無常感を綴った方丈記。「ゆく河の流れは絶えずして…」の一節はあまりにも有名ですが、ずいぶん前に友人が人生の最期は方丈庵の暮らしのようなミニマリズムに憧れると言っていたことを思い出し、その時はあまりピンと来なかったのですが、最近じわじわと彼女の言葉に想いを巡らせることが増えてきました。

そんな折、日常使いの古い器や骨董などを時々購入しているオンラインショップ「逢季荘」さんで出逢ってしまったのが、こちらの四ツ椀。明治時代の輪島塗縁金黒漆の保存状態の良い漆器椀。通称「四ツ椀」と呼ばれるこのセットは飯碗と汁椀にそれぞれ蓋があり、入れ子状に重ねて一つにしまうことができます。会席風に蓋のついた椀として使えば2つの食器ですが、蓋を小皿のように使用すれば、飯椀、汁椀に主菜・副菜が盛れる4つの器として機能的に使え、片付ける際はスタッキングして省スペースに。いにしえからの知恵が詰まった機能的な器は禅僧が使う応量器(修行僧が使用する個人用の食器セット)が元になっているとも言われ、極めて合理的な造りです。ついつい美味しいものに目が眩みがちな欲深い私でも、この四ツ椀で食事をすれば過食を防ぎ、日々節制した食事を摂ることができそうです。

まだまだ煩悩だらけで気に入ったものを見つけては買い求め、多くのものに囲まれて暮らしている毎日ですが、いつか人生を終えるとき傍にパートナーがいるのか、それとも一人なのか、先のことは知る由もありませんが、最期はこの四ツ椀一揃いを傍らに置いて暮らすようなミニマルな生活がしたいもの。

「知足安分」

できるかどうかわからないけれど、そんなことを考えながら黒漆の閑寂な椀を前に背筋を正す未熟者です、笑。

逢季荘さんで昨年から行なわれていた能登輪島支援(漆器をはじめ能登輪島に縁のある商品を購入した場合、価格の一部が寄付される)が再開されたようです。

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