たおやかで慎ましい、原種チューリップ「トルケスタニカ」の品格

春が近づいてくると、お花屋さんで主役級の存在感を増すチューリップ。あの鮮やかなビタミンカラーに元気をもらうことも多いのですが、最近、原種チューリップと呼ばれるちょっと小ぶりなものが目に留まることも増えてきました。球根自体も小ぶりなのですが、お花も少し控えめなサイズで慎ましく可憐です。背丈が10センチにも満たないマイクロサイズのミニチューリップを小さなグラスに活けるのも可愛くて好きなのですが、私のお気に入りは「トルケスタニカ」という名の原種チューリップ。ミニチューリップよりは背丈もありますが、それでも普通のチューリップよりはだいぶ小ぶりです。原種というだけあって素朴ですが、凛として美しく品格さえ感じます。まさに、Less is more。

もともと切花のチューリップを買う時も、工業製品のように真っ直ぐ伸び揃ったものよりも茎がいろんな方向にくねくねと曲がった自由奔放なチューリップのほうが自然さがあって好みだったのですが、このトルケスタニカは球根から伸びたカーブが美しく一つの茎から複数の花が咲きます。白緑色の花弁の中央に黄色い花芯がのぞく様は、華やかさには欠けますが、その品のある佇まいがなんとも言えないニュアンスを周りに醸し出します。かつてメイクアップアーティストの藤原美智子さんが、「品格は廃れない。流行を超えるから、いつまでも古くならない」と仰っていて感銘を受けたのですが、まさにそんな感じ。品種改良を重ね、現代のチューリップがどんなに鮮やかに華やかに咲き誇ろうとも、「別次元だな」と思わされる個性が光ります。

チューリップの花言葉には愛情を表わす言葉が多いのですが、トルケスタニカの花言葉は「失恋」。このあたりにもキュンとしますね。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA