内藤礼 Rei Naito: come and live-go and live 生まれておいで 生きておいで
そっと置かれた作品と向き合う
静寂のなかで自分の息遣いに気づき
静 と 生 を感じる
今回の展示は東博の学芸員の方が2年前に内藤礼さんを考古展示室に案内したことがきっかけで生まれた企画だという。別館から本館を見て最後に別館へ戻るという3会場を回遊しながら見ていく方式で、なかでも圧巻は本館特別5室の展示空間。150年の歴史をもつ東博の建築をゆうに超える縄文時代からの悠久の時間を紡いだ作品群だった。ここ数十年もの間、遮光のために閉ざされたままだったという窓の鎧戸を開放、床の絨毯と仮設壁も取り払い、建築当時そのままの裸の空間をあらわした展示室は、自然光がふんだんに入り光が充満していて、歴史を感じさせる重厚な造りなのにとても清々しく、まるで生まれたての赤子が健やかな呼吸をしているみたいだった。
別館から本館へと3会場を回遊しながら見ていく動線は、別企画の展覧会場を抜けて歩いていくので、そちらの展示を観に来た大勢の人とすれ違ううちに集中力が途切れてしまう。3会場それぞれ良い展示だっただけに、せっかく事前予約制にして入場制限をかけているにもかかわらず別企画の雑踏の中を歩くのが残念だった。それでも本館特別5室の展示は、作品と建築が呼応する内藤礼らしい空間になっていて、座って鑑賞することもできたし、入場数も適切に制限されていたので、世界観にゆっくり浸れてよかったな。こちらでの体験の余韻を残したくて、博物館側(というか作家本人の意向だと思う)提案の回遊順番(別館→本館→別館へ戻る)通りには回らずこの展示室を最後に観てそのまま会場を後にした。
東博の展示はもう6月から始まっていたので9/23までで終わりだけど、連動して9/7から引き継ぐように始まる銀座エルメスでの同名展覧会は年明けまでやっているので、また時間をつくってぜひ観てみたいと思う。