北海道で最も東の空の窓口、中標津空港。この空港に降り立つと、かなりの最果て感を味わえます、笑。「遠くに来たな」と感慨に浸りながら、車で10分ほどの目的地へ。中標津市街を抜け幹線道路から1本小道に入ると、白樺が美しい林があります。その中にひっそりと建つガストロノミーレストランが今回の旅の目的地です。
2年ほど前に知床観光のついでに立ち寄った中標津。理由はこのレストランの情報を見つけたから。フェネトレとは、「窓」というフランス語を意味するFenetreを独自の読み方で表現しているそう。その名の通り、大きな窓があり、白樺の林が気持ちよく見渡せます。初めて味わったフェネトレのコースは、地産地消という言葉では全然表せないくらい、豊かな北海道の恵みをシェフ独自の感性で創意工夫が凝らされた素晴らしいものでした。写真は、当時のこのお店のスペシャリテ。厚岸産の牡蠣を使った逸品です。貝殻の上にはシェフ自ら地元の海岸で摘んできたハマベンケイソウの葉があしらわれています。牡蠣の味がするのでオイスターリーフとも呼ばれているそうです。「少し齧ってみて下さい」と言われ、齧ると確かに牡蠣の味が。牡蠣の蓋を開けると美しい料理が現れ、「食べていただいたリーフと同じ味わいになるよう工夫してみました」とシェフがニンマリします。牡蠣とホワイトアスパラのクリームソースにオイルや山わさび、香辛料などで葉っぱ特有の苦味や香りまで再現されています。何たるプレゼンテーション。すっかりやられてしまいました。その年の11月に二度目の訪問。それからは、このレストランを目的に道東へ旅をするようになりました。お料理も素晴らしいのですが、合わせて出してくださる飲み物も新しい発見の多い、素敵なペアリングです。ワイン以外にも、クラフトビール、日本酒など地元産の希少なもので、そのどれもが美味しくて驚かされます。ここで初めて知った日本酒「北の勝」は今では我が家の定番の食中酒です。
さて、今回のコースです。最初のグジェールは「蓬の葉を手で揉み揉みして香りを楽しんでからどうぞ」とのこと。写真にはありませんが、ゴールドラッシュ(とうもろこし)の冷製ポタージュは甘く、香り高く、鯖のフリットを生春巻きにしたものは香味野菜の香りとの相性がとても良かった。夏フグのカルパッチョは上に茄子のかき氷がかかっていて、ひんやりさっぱりの食感。濃厚なきのこの和えソースと軽やかな茄子のグラニテのコントラストが素晴らしかったです。花咲ガニのトマトソースパスタには山わさびが散らしてあり香りと味わいにアクセントと奥行きが加わります。きのこ採集が趣味のシェフが収穫した地元産のきのこフリットは下に敷かれたラグーが濃厚で、足寄のしあわせチーズ工房のチーズとの相性が抜群。絶妙な火入れの合鴨もソースの黒ニンニクの濃厚さと実山椒の爽やかさが後を引く味わい。デザートまで抜かりなく今回も大満足でした。野菜やフルーツなどの農産物はもちろん、海の幸、山の幸、川の幸、さらに魅力的な乳製品の数々。道東の恵みがいっぱいに詰まった珠玉のコース。今度は真冬の北海道の味覚を堪能しに、伺いたいです。